日本触媒
長期ビジョンを策定
レジリエントに富んだ企業体へ
日本触媒(五嶋祐治朗社長)は4月26日、今後の同社グループの成長に向け、10年後の2030年に目指す姿を描き出した、日本触媒グループ長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」を策定し、Zoomでのウェブ会見を通じて発表した。同社では、これまで独自の技術開発により大きな発展を実現。しかしながら取り巻く事業環境は大きく変化しており、同社グループとしては「既存事業の競争力強化とそれに代わる新規製品・新規事業創出に取り組んできたが、大きな成果に結び付いていない。化学製品のグローバル化、コモディティ化が進み、求められる機能も多様化している状況にあって、新たな企業体質への変革が不可欠と考えた。そこでこのタイミングでそれに向けた取り組みを網羅した長期ビジョンを策定した」(五嶋社長)。
同社では▽人と社会から必要とされる素材・ソリューションを提供していること▽社会の変化を見極め、進化し続ける化学会社であること▽社内外のさまざまなステークホルダーとともに成長していることを30年の目指す姿として、それぞれの事業群の強みを生かしながら、社会情勢や環境変化に柔軟に対応できるレジリエントに富んだ企業体へと進化を果たす。特定の事業領域への優位性が圧倒的に高まる位置付けによって、その分野に対する屋台骨としての役割が集中。経営資源の投入傾向や技術開発の方向性が硬直化することによって長期的な視野に立ったとき、取り巻く環境の劇的な変化によって、受けるダメージは大きなものとなる。そうしたリスクを回避する目的から、同社では既存分野から成長分野へとポートフォリオを変革。事業、環境対応、組織の変革によって事業基盤にかかわるマテリアルズ事業(酸化エチレンなどのベーシックケミカルズ事業およびアクリル酸、アクリル酸エステル類、高吸水性樹脂[SAP]等のアクリル事業)の強じん化を図りながら、収益性の高いソリューションズ事業の拡大を図る。それらを明確な具体的事項として来年より外部発表セグメントを変更する。マテリアルズ事業においては、ベーシックマテリアルズ、アクリルで、高品質の素材を高い生産技術力によってグローバルに提供する。ソリューションズ事業としては、インダストリアル&ハウスホールド事業(生活消費財、自動車、建材分野等)、エナジー&エレクトロニクス事業(電池、エレクトロニクス分野等)、ライフサイエンス事業(健康医療、化粧品分野等)といった多様な産業の顧客ニーズにこたえる目的から、同社の強みであるキーマテリアル開発力を生かすことで、独自の機能を提供する。今後の事業戦略の構想としては、マテリアルズに向けては競争力を備えた既存製品群の原料から一貫生産できるアクリルチェーン・EOチェーンを備えており、グローバルな拠点網の構築といった同社本来の強みを生かしながら、高吸水性樹脂などにおける継続的な顧客ニーズ把握による高性能化を進展、事業ポートフォリオのさらなる強化を図る。ソリューションズ事業では、インダストリアル&ハウスホールド分野では周辺市場での事業拡大・環境貢献製品を拡充。ライフサイエンスでは健康医療・化粧品分野での事業育成へとまい進し、早期に利益貢献を果たす。エナジー&エレクトロニクス分野では電池・エネルギーといった成長分野での事業を確立、ソリューションズ事業拡大に向け、成長分野での新たな事業創出にも軸足を置く。そうした取り組みによる30年の目指す姿として、グループ全体の売り上げ割合を20年のマテリアルズ70%、ソリューションズ30%の比率から50%ずつの売り上げ比率で並び立たせる。ROAは8%以上を見込む。ソリューションズの構成要素としては、サステナビリティ推進によるカーボンニュートラル対応、脱炭素、リサイクル、環境貢献製品の開発、DXを推進することで生産性向上、データ解析による製品開発という流れを実現。省エネ・低公害の電動車(EV等)に欠かせない高性能電解質・安全性・耐久性に優れた亜鉛畜電池用セパレータ・負極材料・グリーン水素の普及をサポートする水素製造用セパレータや半導体、3Dプリンターといった最先端分野を支える高機能材料を手掛けることで、持続可能な社会を構築し、必要とされる企業としての成長を果たす。
長期ビジョンの実現に至るまでの具体的な行動計画となる中期経営計画については21年度中に策定し、来年4月より本格実行していく予定。そのため21年度は中期経営計画におけるゼロ年度と設定し、計画策定完了を待たずにさまざまな取り組みを開始していく。同社では今回策定した長期ビジョンの下、これまでにない事業環境変化に柔軟に対応するとともに、日本触媒グループを強じんな体質に進化させていくため、スピード感を持って変革を進めていく。