2021年8月20日

【夏季トップインタビュー】タイガースポリマー
澤田 宏治 社長

着実な成長目指す
全社の総力を挙げて計画達成へ

自動車用部品をはじめ産業用ホースやゴムシートなど、卓越した技術と製品群で幅広いユーザーに貢献を続けるタイガースポリマー。前期においては、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態によって大幅な需要減に見舞われたものの、下期以降は回復が進む市場を背景に修正計画をクリア。厳しい市場環境を跳ね返しながら、次の発展に向けた取り組みを着々と進めている。今年6月22日に同社の新たなトップに就任した澤田宏治社長に現状と今後の展望について話を聞いた。

【これまでの業績を振り返って】
2021年3月期の決算については、新型コロナウイルスの感染拡大が業績に与えたインパクトは大きく、連結売上高は前年比8・2%減の365億8900万円、営業利益は同11・5%減の11億5200万円、経常利益は同6・7%減の14億5900万円となった。国内においては、昨年5月ごろまでは好調を維持していたものの、その後、急ブレーキがかかり、自動車向けの部品、ゴムシート、産業用ホースなどの分野で需要が低迷した。下期に入ってからは、当社が想定していたよりは自動車メーカーの回復が早く、産業用資材も月を追うごとに回復に向かったものの、上期における急激な需要減をカバーするまでには至らず、通期トータルでは前年の実績を下回った。海外市場に目を向けると、最も大きな影響を受けたのは米国で、特に自動車用部品は顧客のロックダウンによる操業停止で販売が伸び悩んだ。国内やマレーシア・タイなど東南アジア地域も前半は市場環境が芳しくなかったが、中国については依然好調をキープしており、自動車関連、家電ホースともに販売が大きく増加した。中国における回復は昨年から顕著だが、国家の景気刺激策である減免措置も収益向上に一役買っており、何より旺盛な需要が全体の販売をけん引している。昨年10月ごろからはほとんどの需要分野は回復基調に乗り、コロナによる影響を織り込んだ修正計画はクリアすることができた。また、当期純利益については、前期(20年3月期)において米州子会社の減損損失を計上したことにより、同245・5%増の7億6900万円と大幅に増加した。

【今期の第1四半期の状況と通期の見通しは】
今期がスタートしてからは前年同期並みの水準で推移しているものの、世界的な半導体不足により自動車メーカーが生産調整を行っており、当社の自動車向け部品の伸びについても足踏み状況が続いている。ただ、秋口には半導体の供給が正常化されていくと期待をかけており、顧客の生産の復調に伴い減少した需要を取り戻していきたい。

通期の予想としては売上高は397億円、営業利益は12億円、経常利益は13億5000万円、純利益は6億円を見込んでいる。厳しい経営環境が継続していることは事実だが、全社の総力を挙げて計画達成に向けてまい進したい。幸い、ゴムシートや産業用ホースなど汎用品に対するコロナの影響は軽微で手堅い需要に支えられている。今後も大きな影響を受けることは考えにくく、土木工事など、下期以降に活性を見込んでいる需要の取り組みに一層注力していきたい。海外では、米国の状況は改善に向かっているものの、スキルの高い人材の確保に苦慮しており、今後の大きな課題となっている。東南アジアは景気は底を打った印象だが、コロナの収束の兆しは見えず、まだ不安な状況が続いている。中国は現状は好調を持続しているが、政府による減免措置が今期からは適用されないので、収益面で若干のマイナス要因になると見通している。

【今後の課題について】
原材料の需給がひっ迫しており、価格の高騰も続いていることから8月出荷分から全製品の価格改訂をお願いしている。原材料価格の上昇は今後も継続すると見込んでおり、既に内部努力で吸収できるレベルを超えていることから実施に踏み切った。お客様に対しては真摯で丁寧な説明に努め、安定供給のためにも理解を得ていきたい。また、長期的な課題の一つとしては人材の育成がある。特に将来に向けての若手の教育を重視しており、コロナが収束すれば海外研修をはじめ、さまざまな経験を積める取り組みを検討して実践していきたい。

【新たな取り組みについて】
「新規事業部」を立ち上げており、新たな事業の芽を育てようと鋭意取り組んでいる。自動車部品においても、EV車向けなど次世代自動車用の開発を推進しているが、ほかにもゴムやプラスチックを加工・販売する領域で当社の保有する成型技術を生かした製品を念頭に置いている。売上高の拡大にこだわるのではなく、お客様と社会に貢献して利益を生む製品や事業をつくり上げていきたい。

今年5月から受注・生産・出荷と全体的な管理に向けた基幹システムも取り入れた。まだ導入後間もないため、精度が上がるまでにはそれなりの時間は要するだろうが、機能していくことでより一層効率化が図られていくだろう。

【今後の意気込みと抱負を】
祖父が起業して父が大きく育てた当社を今後も安定的に継続させていくことを使命だととらえている。そのためには、特別なことは一切考えておらず、真面目にコツコツと頑張っていきたい。今年6月22日の社長就任後は仕事においては、損得ではなく、善悪で判断してほしいと従業員にメッセージを送った。当社は社会の規範を重んじる一生懸命な社員に恵まれている良い会社だと自負している。基本を外さずに、石を一つひとつ積み上げていくように着実な成長を目指し、これからも長きにわたって繁栄し続ける安定した企業にしていきたい。