2021年10月5日

【ホース・チューブ・継手特集】クラレプラスチックス
独自品質が強み発揮

市場の認知度向上に尽力

クラレプラスチックスが事業展開するホース市場を取り巻く環境については、前期(2020年12月期)は、新型コロナウイルス感染症による感染拡大(以下、コロナ禍)による影響に大きくさらされ、業績の伸び悩みを余儀なくされた。売上高の減少によって、利益も押し下げられて同様に減益。しかしながら今期に入ってから8カ月余りを経て、前期の厳しい状況に対して上向いており、売上高ならびに利益ともに本来の水準へと勢いを取り戻しつつある。現状では、計画にはわずかに届かなかったものの、利益面ではクリア。コロナ禍以前の19年度の水準には戻っていないが、現状の機運を維持することによって、今期中に本来の事業水準に立ち返れるよう尽力している。

コロナ禍によって市況はこう着に近い状態にまで陥ったが、土木分野においては大きな影響を免れており、サクションホースなどは19年度の水準をも上回って推移した。その一方で換気ダクトが伸び悩んでおり、計画よりも下回ったほか、ゴムホースも厳しい需要環境に見舞われた。今期に入ってからは換気ダクトも復調に向けた動きを見せており、来期には回復を遂げると見込んでいる。土木分野においては、今年に入ってからも相次いで自然災害に悩まされている背景から、一段と需要増をうかがわせる風潮が高まっている。河川のはんらん防止など、防災対策にもポンプやホースは不可欠な存在であることから、迅速に貢献できるようデリバリーにおいても万全な体制を整えている。

建築分野については、スマートハウスの浸透に伴う換気ダクトホースの需要拡大が期待されるが、コロナ禍で新設住宅着工戸数が停滞気味の様相もうかがえる。しかしながら国策でもあり、全館空調や高密度断熱化の必要性の高まりはカーボンニュートラルの観点からも上昇。今後は建築業界のトレンド化や行政による追い風が強まる可能性もあることから、将来的な見通しは明るく、同社では今後のホース事業の成長分野の柱の一つとして位置付けており、今後も住宅建設分野には力を入れていく。

インフラ分野も堅調さを維持しており、リニアモーターカー事業も滞りなく、北海道新幹線の案件についても順調に推移している。製品面では土木・建築分野向けの圧送ホース「ネオ・ホーマーCF」において、従来の優れた耐圧性に加えて、耐摩耗性をさらに高めてアップグレードを図った新製品を本年から上市した。ゴムホースから樹脂ホースへと代替需要が期待できる製品として期待されている。来年には一段と軽量化を図った「ネオ・ホーマーCFライト」を新たに投入予定で、土木・建築作業員の負担軽減に一段と高く貢献できる製品として打ち出していく。

橋りょうやトンネルなどに埋め込むことで浸透水(雨水)による構造物の劣化を予防保全する排水促進導水パイプ「クラドリップ」については、北海道新幹線関連などにおいて需要は堅調。ファイバー(細糸)とモノフィラメント(太糸)を編み込んだ独自のハイブリッド構造によって、パイプ内への細かい砂や土、モルタルやコンクリートの侵入を防ぎながら、毛細管現象によって雨水などといった浸透水のみを排水する。建造物の長寿命化に欠かせない製品としてアピールしていく。

アスファルト用の導水管「クラドレン」については、アスファルト道路の定期的な保守工事などによって安定的な需要を確保。将来的にも優良商材として位置付けられている。「クラドレンは市場のシェアの7割程度を確保していると考えており、その優位性は今後も揺らぐことはないと見ている」(野村昌司ゴム・化成品事業部長)。

ウィズコロナの時代にあって、同社の営業体制としては感染予防を徹底した上で可能な限り訪問による対面スタイルを重視。不可能な場合はリモート対応に切り替えているが、顧客側も業務を積極的に推し進めている状況から、最近ではむしろ「技術的な相談があるので来てくれないか」という申し出もあるという。同社としても、明確な目的事案を伝えて申し入れた場合は、訪問に至る可能性が高まる傾向をくみ取っており、最も効果的な手法であるユーザーにダイレクトにアピールする機会の創出に力を入れる。

住設分野全体に及ぶ換気ダクトの販売に関しては、独自の品質優位性を備える製品の強みを顧客にしっかり認知してもらえるよう営業力を強化することが今後の重要な取り組みでもあり、部材とのセット販売など製品の強みが最大限に発揮できるよう販売方法に工夫を凝らす。

今後の需要の伸びを予測している土木分野のホースについても、迅速性が不可欠であることから、物流拠点を充実させることで、受注の翌日には現場に届けられるようデリバリー体制の構築を目指すなど、サービス面の向上にも注力する。