2022年7月25日

三洋化成工業
アルミ電解コンデンサ用電解液「サンエ レック」の生産能力増強

三洋化成工業(樋口章憲社長)は、自動車の電装化、環境対応車の拡大などによるコンデンサ需要の急激な増加に対応する目的から、アルミ電解コンデンサ用電解液「サンエレック」の生産能力の増強を決めた。約4億円の資本を投じ、同社の名古屋工場における設備改造、工程改善などによって3割程度の能力増強を行う。稼働は来年5月の予定。

サンエレックは1986年に開発。電解質に独自開発したアミジン化合物を用いることで、高性能、高信頼性と長寿命化を実現したアルミ電解コンデンサ用電解液で、広い温度領域で高い電気伝導率を示す。加えて、高温での長期間安定性に優れ、業界標準のロングラン製品となっており、自動車の制御ユニットなど、一段と信頼性が求められるコンデンサにも採用されている。

現在、自動車業界では、運転支援システム回路など車載用電装部品が増えるとともに、環境対応への流れから環境対応車(EV)へのシフトが加速。一般的な電子機器はもちろん、5G通信の普及による情報通信機器、製造現場における産業機器のロボット化などもあり、コンデンサ需要はあらゆる分野で年々増加している。太陽光や風力発電などのエネルギー供給の多様化に伴い、送電側の装置においても、より高電圧な電気に対応できるコンデンサが求められている。

今回の生産能力増強により、サンエレックの今後の需要増に対応した安定供給を確保し、世界的な需要拡大に対応、引き続き成長が見込まれる市場に対応する目的から、さらなる能力増強についても引き続き検討を行っていく。

SDGsの目標7〝エネルギーをみんなにそしてクリーンに〟や、目標9〝産業と技術革新の基盤をつくろう〟に貢献するサンエレックは、見えない部分でわれわれの生活に密着、持続可能な社会の実現を支えている。アルミ電解コンデンサは、一般的な電子機器から社会インフラを支える重要な電子部品まで幅広く使用されており、そのコンデンサを支えるサンエレックのさらなる品質向上に努め、同社では今後も将来に向けた技術開発を続けていく。

加工性に優れているアルミ電解コンデンサは、電解コンデンサの主流となっている。アルミ電解コンデンサは、アルミ表面に酸化被膜を形成することで、これが絶縁体の役割を果たして電気を遮断。この酸化被膜は多孔質になっており、表面積を稼ぐことができることから、他のコンデンサと比較して1000倍以上の電気を蓄えることができる。その一方で、酸化皮膜は時間とともに欠陥が生じ、絶縁体ではない部分ができてしまうことで、これがショートなどの原因となることから、その部分を再度酸化させ修復する必要がある。その役割を担っているのが電解液であり、可能な限りアルミにダメージを与えることなく酸化被膜を再度形成する能力が求められる。

アルミ電解コンデンサは、電極内部のイオンが活発に動くことで電気を効率よく蓄える仕組みを構築。ただし、使用中に発生するアルカリ成分が、シール用のゴムやリード線の腐食を促し、これが液漏れの原因となっていた。イオンの移動速度が速いこれまでの物質ではこの現象が起こりやすいことから、電解液にはアルミにダメージを与えず酸化被膜を再度形成する基本的な性能、イオンの移動速度を損なうことなくシール用のゴムにもダメージを与えない機能が求められていた。

サンエレックは、電解質に独自開発したアミジン化合物を用いた電解液で、イオンの移動速度を維持しながら、発生したアルカリ成分を中和し無害化することに成功。コンデンサ業界の最大の課題であった液漏れを克服し、幅広い分野で使用されている。