2022年11月25日

アキレス
「土壌生分解性ツリーシェルター」

住友林業、GCJと共同で開発

アキレス(日景一郎社長)、住友林業(本社・東京都千代田区、光吉敏郎社長)、ツリーシェルター事業などを通じ、森林等の環境改善・維持に貢献しているGCJ(本社・京都府京田辺市、木下明代表)の3社は土に還る「土壌生分解性ツリーシェルター」を共同で開発した。アキレスは土壌生分解性ツリーシェルターに使う素材の開発、住友林業は実験する森林と木製の支柱を提供、GCJはシートの加工と固定器具の提供を行った。

この土壌生分解性ツリーシェルターは、ポリプロピレン製品の代替として植物由来のPLA(ポリ乳酸)を含む生分解性樹脂(優れた分解性能を持つ石油由来成分と配合)100%を使用。利用後、森林の中で土壌中の微生物により自然に分解され、林業から発生する環境負荷が大幅に軽減されるとともに、脱炭素社会に貢献する。これによってシェルターを運び出す作業が不要となり、運送や焼却処分で発生するCO2を大幅に削減できるほか、撤去する作業員の負担を軽くし、回収・廃棄コストが削減できる。

近年、戦後植林された人工林の多くが伐採期を迎え、伐採・再植林が全国各地で進んでいるが、ニホンジカや野ウサギなどが植林したばかりの木を食べる被害が林業の現場では大きな問題となっている。鳥獣被害を防ぐ手段としては再植林地全体を囲う防護柵(防護ネットなど)が最も多く用いられているが、メンテナンスの人手が不足していることもあり、植林した木を一本ずつ覆う単木保護資材(ツリーシェルターなど)も広く用いられている。現在利用されている防護ネットやツリーシェルターの素材は主にポリプロピレン製で、設置後の回収作業や廃棄に労力とコストがかかるため、森林内に放置される恐れがあった。

アキレス、住友林業、GCJの3社はこの課題を解決するため、土壌生分解の効果がありながら従来品と同等程度の強度がある素材を開発。その素材を使った土壌生分解性ツリーシェルターを試作し、環境省の公募で日本有機資源協会が採択した「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」として2020年からの2年間、開発と森林での実証試験を行ってきた。従来のポリプロピレン製ツリーシェルターとの比較で植林木の成長性、資材の強度や分解性能などを検証。その結果、従来品と同等の植林木の成長と資材の強度が確認され、土中に埋めることで分解がさらに進む素材であることが実証された。

今後の展開としては来年3月までに商品化し、コストダウンを進め、30年度には国内で利用されるツリーシェルターのすべてが植物由来原料を含む素材となるよう取り組んでいく。

なお、土壌生分解性ツリーシェルターは11月13、14日に大分県別府市で開催された「2022第45回全国育樹祭開催記念行事 森林・林業・環境機械展示実演会」で展示が行われた。