新年トップインタビュー
タイガースポリマー
要望には新開発で
新たな付加価値に積極対応
【2022年を振り返って】
第2四半期(4-9月)までは自動車部品分野において半導体不足や、中国のロックダウンによるマイナスの影響を大きく受けたが、その一方でホースやシートなどといった工業用品分野は順調に推移し、第3四半期を経た現状においてもその流れは続いている。しかしながら、工業用品であっても自動車分野における設備投資の面では伸び悩んだ。ただし半導体不足も、第3四半期に入った辺りから緩和されてきた気配をうかがわせている。工業用品では好調であった太陽光発電の需要において一服感が漂っているものの、サクションホースなどの動きは活発化している。フッ素ゴムやシリコーンゴムを使用した製品については受注が伸びたことで業績に貢献したが、原材料のひっ迫によって確保に歯止めが掛かった側面もあり、好調な流れに乗り切れなかった。海外においても、上海のロックダウンや半導体不足による影響を受けたことで自動車部品事業が厳しい局面に置かれた。現在は回復基調にあるものの、為替の影響を受けたことにより、業績が回帰している手ごたえを実態として感じ取ることができなかった。
米国においては、人件費が高騰しており、人材確保が課題として浮上している。産業用ホースの販売は好調だったが、半導体不足による影響は各地域に及んでおり、メキシコは振るわなかった。
東南アジアにおいても厳しい状況は同様の状況にあり、マレーシアの業績も伸び悩んだ。タイは増収増益を遂げたものの、当初計画には届いていないことから、本質的に好調な状況とは言い切れない。その一方で、中国は自動車部品分野において厳しい見通しを立てていたが、実際には想定したほどの落ち込みはなかった。
【厳しい局面への対応と課題について】
半導体不足が緩やかに回復していることから、自動車部品の需要は徐々に取り戻せるものと見ているが、部品については当社におけるホースの製造設備に必要な部品調達でも課題となるなど、サプライチェーンについてはまだまだ混乱している様相をうかがわせている。
上半期に顕著化した課題としては、海外では人件費の高騰であり、国内では人材確保への対応が深刻度を増している。海外は賃金水準の上昇が背景にあり、国内は人口減少に端を発しているなど事情の違いはあるものの、生産体制を維持していく上での悩ましさは変わらない。人手不足への対応としては、登用する人材の多様化に解決策を求める選択肢もあるが、当社としては、自動化や効率化を推進する取り組みを強化することによっても対応を図っていきたい。ただし、生産体制の見直しについても省人化・省力化への取り組みであることから、人手を必要とする側面は残されており、人材確保に向けた努力は今後もおろそかにすることはできない。
原材料不足による安定供給厳守に向けては、顧客とのち密な打ち合わせを通じて、需要量と生産計画をリンクさせる手法を取り入れることによって解決を図ることができた。製販一体となった組織体制の機能を生かし、担当者レベルではなく、組織的な取り組みとすることで乗り切ることができた。こういった課題解消に向けても顧客第一の姿勢は決して変わることなく、顧客の要望に対して最大限にこたえる目的から、部署ごとの調整会議を実施し、最終的には全社的な結果として取りまとめている。
【新製品の研究開発、リリースについて】
環境対応製品として、新たに「BM(バイオマス)」シリーズを展開しているが、好評に受け入れられており、今後はバリエーションを充実させていく。その第一弾製品として「タイダクトホース GL―BM」「メディルチューブ V580C―BM」を市場に投入しており、タイダクトホース GL―BMは、バイオマスとして生物由来の素材を、製品全体に占める重量の10%の割合で含有しており、空調送風用や一般機械類の送風用などの用途に向けて訴求している。
メディルチューブ V580C―BMは、生物由来の素材を製品重量に対して45%の割合で使用した。軟質塩ビで構成されており、理化学機器などの薬液搬送配管の用途などを想定して展開している。
新製品としてはこのほか、新たに高発泡シリコーンスポンジシート「E5」「E10」をリリースした。断熱性に優れており、非常にソフトで滑らかな感触を備えたシリコーンスポンジシートであり、お客様の「もっと柔らかいシートがほしい」というニーズに基づいて開発した。独立気泡によってE5は約6~7倍、E10は約5倍の発泡倍率で製造しており、用途としては各種ガスケット・パッキン類、耐熱クッション材などに適している。
また昨年12月には「タイダクトホース 難燃GL―HG型」を投入した。高レベルの難燃性が求められる吸排気管、保護管などでの使用に適している。
当社の製品は、そのラインアップにおいてカバーできていない特性を備えた製品へのニーズに対しては、新規開発によってこたえる体制を貫いている。相談を頂ければ、これまで市場では見いだせなかった新たな付加価値を備えた製品開発に対しても積極的に取り組んでいく。
【今後の展望と経営方針について】
当社では〝三方よし〟という理念の下で事業を展開しており、本年もこの姿勢を変えることなく業績の向上に取り組んでいく。三方よしの三方とは、お客様、従業員、仕入れ先を指しており、この三方を大切にすることにより、高い満足度が得られる結果を引き出していく。社会的には、重視するべき存在の筆頭として株主が置かれるが、この三方をうまく仕事に取り組むことによって、株主自体の満足度も高められると考えている。従業員あってこその企業であり、お客様の仕事がうまくいってこそ発注が頂ける。仕入れ先の存在があるからこそ、製造業としての業務が成り立ち、事業に励んで受注を満たすことができる。いずれを欠いても商売は成り立たないことから、この理念を常に心に留めることによって、企業としての成長を果たしていきたい。