2023年1月10日

新年トップインタビュー
住友ゴム工業

高収益企業に変革
売上収益1兆円の壁を守る

【2022年を振り返って】
昨年は、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな制約が完全に取り払われることなく、国際情勢の動向や、それに伴う外部環境と市場環境の激しい変化に振り回されるなど、非常に厳しい一年となった。そうした事業環境にあって、中期計画目標として定めていた売上収益1兆円を達成できる見込みが立っている状況は、全社を挙げて取り組んできた結果が実を結んだ表れとして評価している。しかしながら製造コストや海上運賃の高騰、グローバルレベルでのインフレ進展などといった想定外の厳しい市場環境にさらされ、利益率については非常に低い水準にとどまったことで、これから取り組むべき課題が鮮明にあぶり出された。2020年に2025年までを実行期間とした新中期計画をスタートさせたが、コロナ禍によって社会の経済活動全体が混乱に陥り、初年度から想定していた事業環境と実態との大きな乖(かい)離が生じた。売り上げ面については、製品やサービス面への信頼性に支えられ、市場での競争力も高まっていることから成長軌道を維持している。今後はアクションプランを着実に成し遂げ、新たにあぶり出された収益力向上といった課題を克服する。中期計画の進ちょく状況としては、〝高機能商品の開発・増販〟〝新たな価値の創出〟〝ESG経営の推進〟の3項目をバリュードライバーとして推し進めてきたが、一定の成果を上げているものの、成し遂げられていない部分もある。グローバル展開に力を注ぎ、自動車メーカーと同じベクトルを描きながら世界各国に新たな拠点を立ち上げ、すべての拠点で事業展開に全力を注いできたが、効率面という新たな課題に向き合う必要性が持ち上がった。今後は選択と集中といった見直しを念頭に置き、効率といった要素を重視しながら事業の拡大に臨む。売り上げ規模だけでなく、プレミアム商品の強化など、収益率という項目の位置付けを上げていく。売上収益1兆円という壁を守り、市場での販売力を高めながら、製品の質を上げていくことによって利益の積み増しに努めていきたい。

【収益力向上に向けての具体的な取り組みは】
事業ポートフォリオのち密な分析を行い、選択と集中の方向性を明確にしながら、高収益企業としての体質づくりを行う。これまで「Be the Change」プロジェクトを通じて、経営基盤強化に取り組み、会社全体の変革を生み出してきた。Be the Changeプロジェクトは〝組織体質の改善〟〝利益基盤の強化〟を目的とした全社活動で、組織体質の改善では、キャリア支援制度といった施策、経営基盤の強化に向けては運転資本の改善や経営資源の配分コントロールといった面から貢献しており、当社の基盤づくりにおける位置付けも高まっていることから、今後も活動を継続し〝変革し続ける文化〟として定着させていく。

【センシングコアビジネスへの取り組みについては】
センシングコアは、当社の事業の柱として育成していく方針で、ビジネスとしての将来像を描いている状況にある。事業の成長率の高さが期待でき、ソリューションによって大きな売り上げ規模を構成することができるものとみている。センシングコア技術においては空気圧、荷重、路面状態、摩耗検知に加えて車輪脱落予兆検知機能があり、ロードマップとしては車載OSを搭載した次世代EVを中心とした開発とライセンス販売を進める計画を立てている。自動車メーカー複数社と政府機関と共同で実証実験をスタートさせており、初のセンシングコアビジネスとして、路面状態検知機能と車輪脱落予兆検知機能については、2024年からの導入が決まっている。昨年には中国において専門組織を設置したが、今年1月には欧州においてもセンシングコア導入に向けた専門組織を立ち上げる。トラック・バス用タイヤにおいても、車輪脱落予兆検知機能、温度管理機能へのニーズは高く、こうした案件を着実に取り込んでいく。路面状態検知機能については全車種にとって有効であることから、幅広く積極的に展開を図っていく。

【EVタイヤの開発について】
中国市場において、当社初の市販用EVタイヤDUNLOP「e.SPORT MAXX」を発売したが、既に中華系EVメーカー13モデルに採用が決定している。欧州市場に向けてはFALKEN「e.ZIEX」を発売する。EVはバッテリーの搭載によって車重が増し、トルクも大きく、駆動音が低いことから、タイヤには低燃費性能のほか、優れた耐摩耗性、高度な静粛性能が求められる。e.SPORT MAXXは、当社史上最高レベルの低燃費(電費)性能を備えており、ノイズを低減するトレッドパターンに加え、静粛性を高める特殊吸音スポンジ〝サイレントコア〟を採用している。当社が備えた技術の総力を結集した製品を供給することで、EVタイヤとしての評価を高めていく一方で、当社のタイヤ全体への信頼性を高めていく効果が得られることから、リスク管理を確実に実施しながら取り組みを継続していく。

【今後の方針と施策、展望について】
本年は、将来の飛躍に向けて、より一層の変革を推進する第一歩を踏み出す年として考えており、3つの方針を策定した。第一の方針は〝将来の飛躍に向けた変革を実行し、収益力を高めよう〟で、カーボンニュートラルに向けた取り組みが世界中で加速しており、自動車業界においてはCASE・MaaSと言われる革新が進んでいる。これらの変化に対応し、持続可能な事業を展開していくためには大きな投資も必要になることから、高い収益力を実現するための〝変革〟に力を注ぐ。第二の方針は〝イノベーションを推進し、新たな価値の創出を加速しよう〟であり、これまでもタイヤ・スポーツ・産業品の各事業において独自の発想で技術開発を行い、市場ニーズに対応してきたが、今後も当社独自のさまざまなイノベーションを生み出し、社会に対して新しい価値を提供できるよう開発や生産を加速させていく。独自技術の活用によって、自動車のEV化や自動運転化によるニーズに対応しながら、サステナビリティ長期方針で設定したカーボンニュートラルの目標達成に向けた取り組みを加速させる。また、全社的な地道な活動とイノベーションによって着実に実現することで、当社事業の経済的価値・社会的価値を高めていく。第三の方針は〝多様な力を結集し、変化をのりこえる会社にしよう〟で、世界中の拠点や部門が同じベクトルに向かって進み、全体最適による意思決定を行うことによって、会社が良い方向に進むことができるようマインドセットを共有する。統一された判断軸として〝Our Philosophy〟をすべての社員のよりどころとしていく。多様な人材や働き方が尊重され、心理的安全性の高い職場づくりに全力で取り組んでいくことで、一人ひとりがイキイキと働き、最大のパフォーマンスを生み出す職場を実現する。当社は今後も、グループ社員の多様な力を結集することで変化を乗り越え、持続的な成長を成し遂げていけるよう全力を尽くして取り組んでいく。