カネカ
微生物によりCO2から直接ポリマー合成
4社で技術等結集
循環型バイオものづくり
【循環型バイオものづくり技術】
カネカ(田中稔社長)は、島津製作所(山本靖則社長、以下、島津)およびバッカス・バイオイノベーション(本社・兵庫県神戸市、丹治幹雄社長、以下、バッカス)、日揮ホールディングス(本社・神奈川県横浜市、佐藤雅之会長CEO、以下、日揮HD)との4社により、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に対し、「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」(以下、同プロジェクト)を共同提案し、実施予定先として採択された。同プロジェクトは、2020年12月25日(21年6月18日改訂)に経済産業省が関係省庁と策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」におけるカーボンリサイクルの実現に貢献するもので、4社がこれまで培ってきた知見や技術を結集し、CO2を原料として生分解性バイオポリマーを生産する微生物の開発および生産プロセスの技術開発を行い、化石資源に依存しない循環型バイオものづくり技術の実現を目指す。
同プロジェクトの事業期間は23年度~30年度で、3つのテーマに取り組む。一つ目は、CO2を原料とするガス発酵バイオファウンドリ(機能をデザインした微生物を創製して、有用物質を効率的に生産する微生物開発プラットフォーム)の確立で、バッカスと島津が担当。二つ目は、バイオポリマー生産微生物などの開発・改良にカネカが取り組む。三つ目がCO2を原料に物質生産できる微生物などによる製造技術等の開発・実証で、カネカ、日揮HD、島津が担当する。
カネカは、植物油などを原料に微生物により生産されるカネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」の工業化に世界で初めて成功。同プロジェクトでは、これまで培ってきたバイオ・高分子の技術を基に、CO2を直接原料としてGreen Planetを生産する新たな生産微生物などを開発するとともに、工業化に向けてセミコマーシャルプラントの立ち上げ、生産実証を行い、幹事会社として、同プロジェクトを主導する。
バッカスは、データ駆動型バイオファウンドリ企業として、独自技術を結集した育種プラットフォームを高度化し、高度にデザインされ、目的とする物質を効率的に生産する能力を高めた細胞であるスマートセルの育種期間の大幅短縮を目指している。同プロジェクトでは、独自のデジタル技術を駆使することによって、ガス発酵に最適な細胞をデザインし、さまざまな品種を創出していく。また、島津と共同開発する高速評価システムを導入、データ活用するとともに、日揮HDと微生物育種からプロセス開発までのワンストップサービスを実現する「統合型バイオファウンドリ(微生物育種からプロセス開発までをワンストップで提供するバイオものづくりプラットフォーム)」の構築を目指す。
日揮HDは、オイル&ガス分野のEPC(設計・調達・建設)事業で培った水素ガスなど、安全なガスハンドリングやプロセスのスケールアップ、ライフサイエンス分野での培養槽の最適化設計技術において多くの知見を保有。同プロジェクトでは、CO2、H2、O2を含む混合ガスの安全なハンドリングシステムと高効率ガス発酵プロセスの開発やスケールアップ、微生物の育種からプロセス開発までをワンストップで行う統合型バイオファウンドリをバッカスとともに確立する。
島津は社会課題の解決に向け、幅広い分野への分析計測技術・ロボティクス技術とAIを用いたシステムによるデータ解析技術を提供することによってさまざまなノウハウを蓄積。同プロジェクトでは、バイオファウンドリ構築に不可欠な高速での生産性評価技術の開発に取り組む。プロジェクト内で構築する予定のセミコマーシャルプラントにおけるガス発酵を計測し、安全・高効率な発酵が行われるよう支援する評価システムを開発する。