2023年6月20日

コニカミノルタ
バイオプロセスラボ設立

産総研、AISTSolutions
次世代マネジメントシステム実現へ

コニカミノルタ(大幸利充社長)、産業技術総合研究所(石村和彦理事長、以下、産総研)、研究成果の社会実装に向けた体制と活動を強化するため、産総研100%出資により本年4月1日に設立されたAIST Solutions(本社・東京港区、逢坂清治社長)の3者は6月1日、茨城県つくば市の産総研つくばセンター内に「コニカミノルタ―産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ」(岩崎利彦ラボ長、以下、バイオプロセス研究ラボ)を設立した。これにより、バイオプロセスにおけるスケールアップ時のエンジニアリング課題の解決、微生物による高機能材料製造を志向した次世代バイオ生産マネジメントシステムの実現を目指す。

生物由来の素材を用いたものづくりや微生物などの生物の能力を活用して有用化合物などを作り出す「バイオものづくり」は、化石燃料を原料とせず物質の生産を行うことができることから、カーボンニュートラル実現のキーテクノロジーとして大きな期待が寄せられている。

コニカミノルタではセンシング技術、機械学習、ディープラーニングなどのAI技術や、これらを組み合わせた画像IoT技術を利用して、自社のケミカル工場でもマテリアルズ・インフォマティクスおよびプロセス・インフォマティクスの導入を推進。バイオプロセス研究ラボではこれらコニカミノルタの技術をさらに進化させ、産総研の総合力を投入して融合させることで、これまでにない複雑系物質生産におけるモニタリング技術を開発し、バイオものづくり実用化への課題である生産プロセスのスケールアップと安定生産に向けて取り組みを行う。

バイオものづくりの課題の一つに「スケールアップの壁」が存在。物質生産能力を強化した微生物細胞「スマートセル」による生産方法では、微妙な条件の違いで微生物の挙動が変化して生成反応が変わってしまうため、試験管レベルで成功しても量産規模にスケールアップした際には、求められている歩留まりや品質を常に維持することは非常に困難。また、このようなスマートセルに生産させた化学物質を「バイオ由来粗原料」として、従来の化石由来の原料と置き換えようとすると、生産工程での条件がそのまま適用できない場合が多く、バイオ原料固有の不純物による品質のバラつきによって最終製品の歩留まりや品質にも問題が生じてしまい、バイオ由来製品の製造プロセスのボトルネックになっている。

バイオプロセス研究ラボでは、試験管レベルと量産レベルでプロセスモニタリングして得られたデータを関連付けることによって、量産環境における微生物の挙動を予測して工程管理に役立てる研究を行う。主な研究内容としては①マルチスケール計測によるデータ駆動型AIセンシングシステム開発=試験管レベルと量産レベルでのさまざまなデータについて関連づけを行うためのセンシングデバイスについて、コニカミノルタの光学・化学の技術と産総研のバイオものづくり技術を用いて開発を行う。また、それら複数のセンシングデバイスから得られたデータについてAI分析とプロセス制御を行う「データ駆動型AIセンシングシステム」の開発を行う②バイオ由来粗原料を用いた高機能材料製造プロセス技術開発=モデルケースとして量産に適した化学物質を生成できるスマートセルの設計を行う中で、新たなプロセス設計システムとバイオベース製品の効率的な提供のための研究を行うことが挙げられる。なお、一部の研究は北海道札幌市の産総研北海道センターでも実施される。

3者は今後も、バイオものづくり実用化への課題解決を通してカーボンニュートラルをはじめとするサステナブルな社会の実現に貢献していく。

「バイオものづくり」全体フローと研究内容(イメージ図)