東拓工業
中西俊博新社長に聞く
将来に期待できる会社に
製造業としての社会的責任果たす
今年4月1日、東拓工業の新しいトップに就任した中西俊博社長。1985年の入社以来、一貫して技術・開発、製造部門の要職を歴任し、モノづくりの本質をとらえたすい眼によって同社を一層の発展へと導いていく。歴代の社長が築き上げてきた基盤をさらに強固にしながら、次の世代へとバトンをつないでいくことが自身の使命と語る中西社長に話を聞いた。
【トップ就任後、半年近くを経て改めて現在の立場から俯瞰(ふかん)した東拓工業の優位性とは】
1952年の創業以来、業界に先駆けてプラスチックホースを開発・上市し、多種多様な機能製品でお客様のお困り事の解決に貢献することを信条として事業の歩みを進めてきた。これまでの歴史の中で培われてきた当社の本質的な強みは、パイプ・ホースを中心とする製品開発力にあると自負している。製造本部の独自のモノづくり力と強い営業組織、さらには品質保証・品質管理力など、技術、製造、営業、品質の各組織が混然一体となって総合力を発揮できることが最大の強みであるととらえている。各組織の持てる技術と業務の推進力をさらに磨き上げながら、当社が見据える将来の姿に一歩ずつ近づいていきたいと、改めて気持ちを引き締めている。
【さらなる飛躍に向けた今後の展開は】
豊田元社長(現顧問)、太田前社長の時代から重要な経営課題の一つとして〝組織の風土改革〟に取り組んできた。相応の時間は要したものの、現在はその効果が着実に現れており、風通しが良く、目標達成に一丸となって臨むチームの一体感が醸成されてきたように感じている。部門を横断した定期的な会議が組織間の連係に大きな役割を果たしており、製・販の両輪が情報を共有することによってポテンシャルが引き出され、全社のパフォーマンスがフルに発揮されることを期待している。これからもさらにコミュニケーションを密に図りながら、部門間の横のつながりをさらに強固にして推進していきたい。
【これまでの業況と足元の状況について】
前期(2023年3月期)の決算は、昨年実施した価格改定の効果もあって売上高は2ケタの増収となった。一方、利益面においては原材料をはじめとする製造コストの高騰によって計画には未達であったものの、ほぼ想定範囲内での着地となった。非常に厳しい経営環境の中でも健闘できたのは社員のたゆまぬ努力の結果だととらえており、改めて全社員に敬意を表したい。
今期がスタートしてから既に上期を終えようとしているが、販売は前期からの勢いを維持しており、前年同期との比較では2ケタの伸びを継続している。ただ、これは値上げによる効果が顕著に現れたもので、物量的に見れば微増にとどまっているのが実状だ。通期の見通しについては1ケタ台の増収と収益の確保を目指して推進しており、下期にかけても積極的な営業活動を展開していくことで、この目標値は必達できるものと見通している。
【働き方改革の取り組みについて】
製造スタッフをはじめ、全従業員の健康の維持とライフワークバランスの確保に努めている。残業時間を削減していくことを念頭に、製造スタッフの増員を進めており、一時的には労務費は上昇するが、生産現場の待遇改善を図りながらモチベーションのアップにつなげていきたい。
また、社員エンゲージメントの向上にも取り組んでおり、一人ひとりの声に真しに耳を傾けながら、従業員と一緒に労働環境の改善を進めている。夏場の暑さ対策としては、全工場で遮熱塗装を施して気温の上昇を抑えたり、空調機器もこれまでの倍近く増設した。
ほかにも意識啓発を目的として、製造された製品がどのように使われていてユーザーに役に立っているかを理解してもらうため、営業担当者が参加して工場での商品説明の場を設けてくれている。そういった取り組みを通してスタッフそれぞれが〝働き易さ〟と〝働きがい〟を肌で感じ、力をいかんなく発揮してもらうことが事業推進の大きな原動力となる。労働環境の整備と社員のモチベーション向上に向けては、これからも惜しみなく労力と資金を費やしていく。
【地球環境保全の取り組みについて】
ここ数年、工場で使用する電力を再生可能エネルギー由来に置き換える計画でグリーン電力の導入を進めてきたが、今年7月の沖縄工場をもって全工場における切り替えが完了した。長瀬産業グループが掲げる2025年度で2013年度比37%のCO2削減、2050年までにGHG排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成に向け、グループで足並みをそろえながら製造業としての社会的責任を果たしていきたい。
【今後の展望と意気込みを】
当社の工場に来訪されたお客様からは社員の元気なあいさつも含めて、実にクリーンで明るい雰囲気が快いとお褒めの言葉を頂くことがある。当然のことではあるが、スタッフの自発的な思いが、行き届いた清掃活動や整理整とんに結びついており、効率的で働きやすい環境で従事できる工場を実現していることは当社の誇りだ。これからも社員が仕事にやりがいを感じ、将来に期待できる会社に成長させていこうと思いを新たにしている。
事業展開においては、これまで推進してきた工業用ホース、電設資材、土木資材、橋りょう関連資材といった既存の事業路線をさらに推し進め、近年力を入れている補修関連の需要を着実に取り込み、注力しながら次の飛躍のための堅固な土台を築き上げていきたい。