2023年10月20日

日本ゴム機械懇話会
「第46回JRM懇話会例会」 

事業の近況を報告
厳しい局面の打開策模索

日本ゴム機械懇話会(JRM、山中亨会長)は10月18日、福島県西白河郡のグランドエクシブ那須白河で「第46回JRM懇話会例会」を開催した。当日は会員18社21名、報道4社の総勢25名が出席。会合では会員が事業の近況を報告し合ったほか、今回はポスティコーポレーションの馬場孝仁社長を講師に「ゴム業界のSDGsの取り組みについて」の講演会が開かれ、講演終了後は会員各社からSDGsへの考え方や取り組みの一例が紹介された。

例会は鈴木康三会計監査の司会進行で進行。森大作副会長の開会の辞に続いてあいさつに立った山中会長は「今回は会長のバトンを引き継いでから初めての例会となる。皆さんのご協力を仰ぎながら実りある会合にしていきたい。国内の経済の状況については穏やかな回復基調にあり、大手企業を中心に事業収益は高水準で推移し、自動車業界も部品調達の問題で生産が揺れていたが徐々に回復へと向かっている。

また、コロナ禍によるさまざまな規制も緩和されたことで、インバウンド需要も勢いづいているようだ。しかしながら、われわれ中小の製造業にとっては、まだまだ先行きを見通すことが難しいと実感している。そのような状況にあっても、ディスカッションを通して何とか厳しい局面を打開していくためのヒントを会員の皆さんと共有しながら、ともどもに一歩ずつ前へと進んでいきたい」と、今後の意気込みを述べた。

会員企業による近況報告では、昨年4月に新たな生産拠点を設立したあるメーカーは「新工場の稼働開始から1年半が経過したが、まだ本格的とは言えないものの、受注はかなり戻ってきた。ただ、受注の内容についてはコロナ禍以前から変化しており、従来のゴム関連の連続加硫装置やバッチオフマシンのほか、現在はプラスチックのリサイクル法案の発令に伴ってフィルムなどの洗浄設備機械関係の仕事が中心となっている。ただ受注が増加しても年度内にこなせる量には限界があるので、受注残が発生して通期での売り上げ拡大にはなかなかつながらない。しかしながら、部品の調達問題も少しずつ改善が進んでいるので、来期に向けての攻勢を期して頑張っていきたい」と現在の課題と、今後の見通しを述べた。

また、12月決算のあるメーカーは「昨年度は、ようやく業績がコロナ禍以前の水準に回復したが、今期も販売は順調に推移しており、売上高は前年同期比23%増で推移している。コロナ禍においてはユーザーが投資抑制傾向にあったものが、社会情勢の変化に伴って急激に受注も活発化してきた。タイヤ製造設備を中心としてそのほかのゴム製品製造機械もオーダーが増えており、より幅広い対応が必要となっている」と好調な業況の一端をのぞかせた。

ガスケットやゴムパッキンの加工など、ゴム関連でも幾多の実績を持つプロッターマシンの販売を手掛ける企業は「今期を振り返ると前年より納入台数は増えており、中でもリピーターに向けての2台目、3台目の販売が業績に貢献している。現状では新規の顧客への納入より増設案件が増えているが、これまではゴム素材のユーザーが中心であったが、新オプションの機能により、スポンジ製品への加工も可能としており、そういった新たな分野での拡販も現在、推進している」と、ユーザーの機械の性能に対する高い評価に自信をにじませた。

ほかにも、マイクロ波を応用した連続式ゴム加硫装置を展開するメーカーは「当社は今期は設立50周年の節目の年であり、社員一同さらに頑張ってスタートしたものの、上期については厳しい状況が続いた。しかしながら、年度後半に向けてはようやく受注が増加して忙しくなってきたので、少しでも期初の計画に追随していこうと気を引き締めて臨んでいる。現状の受注状況としてはカーボンニュートラルの関連で、マイクロ波装置の導入による効果の実証のためのテストの依頼や実際にテスト機の受注が増えていることは、地球環境保全の取り組み推進に向けた流れの中で明るい材料だととらえている」と今後の事業の展開の方向性を示した。

全体的には会社によって直近の需要動向に違いはあるものの、市場環境の変化により業況がコロナ禍前の水準まで回復してきた企業が多いと言える。ただ、原材料の高止まりによる利益面の影響など幾多の課題は残されていることから、今後の対策について依然、模索を続けている現状が浮き彫りとなった。

会員間の近況報告の後は、ポスティコーポレーションの馬場社長が「SDGsの基本的な考え方 SDGs×RUBBER」をテーマに講演。馬場社長はSDGsの基礎知識から企業が取り組むメリットについて、資料と自社が出版した書籍などを用いて詳しい解説を行った。また、講演終了後には会員各社が自社におけるSDGsの取り組みも紹介。あるゴム射出成形機メーカーは「会社の規模的にも高い目標を掲げるより、できることから取り組んでいくことが大切だととらえている。世界的な大きな流れでもあり、当社としてはお客様のニーズを取り入れながらその目的の達成に貢献できるような開発を今後も心掛けていきたいと思う」と今後の方向性を明らかにした。

次回のJRM例会(総会)は東海地区が担当となっており、来年4月10、11日の2日間、会場は滋賀県もしくは愛知県内での開催が予定されている。