2023年12月10日

住友ゴム工業
仙台市に新たな研究拠点開設

「ナノテラス」を最大限に活用
関係者出席の下、立地表明式

住友ゴム工業(山本悟社長)は、来年度から稼働を予定している3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を最大限に活用する目的から、宮城県仙台市に新たな研究拠点「住友ゴム イノベーションベース・仙台」を開設する。同研究拠点は、研究開発本部分析センターが中心となって運営し、先進技術開発に取り組むとともに、仙台市における産学官共創体制を拡大するための拠点として活用していく。

タイヤ開発に向けてはゴム材料の研究が不可欠ながら、タイヤゴムは多くの材料によって構成されており、ナノスケールからマイクロスケールまで階層構造を形成する非常に複雑な構造を形成している。このようなゴム内部の構造を詳細に解析する目的から、同社では最先端の放射光施設やシミュレーション技術を活用してきた。 

これまで活用してきた大型放射光施設SPring―8(兵庫県佐用町)などの硬X線からは、主にゴムの構造情報を得ることが可能。加えてナノテラスの世界最高クラスの高輝度軟X線からは、ゴムの化学情報を得ることができ、非常に速い速度で起こる反応や現象をとらえていくことが可能になると考えられている。これらの施設を組み合わせて活用することによって、実際のタイヤ使用環境に近いリアルタイムな計測ができるようになり、性能持続・劣化抑制技術をはじめとした同社の研究開発がさらに加速することが期待されている。

同社ではナノテラスを材料分析に活用するが、研究開発の本部を置いている神戸市において分析試料を作成して仙台市に持ち込んだ場合、試料が経時変化してしまうことで正確なデータが取得できない可能性がある。また、ナノテラスで得られる膨大な計測結果を持ち出して分析するためには、大容量のハードディスクが必要となり物理的な手間が掛かる。

そこで、ナノテラスに近い拠点で試料を準備すること、ナノテラスで測定したデータに研究拠点から利便性高くアクセスできるようにする目的から、NTT都市開発(所在地・東京都千代田区、辻上広志社長)が仙台市で手掛ける「アーバンネット仙台中央ビル」に、住友ゴム イノベーションベース・仙台を開設することを決めた。

アーバンネット仙台中央ビルは、仙台市の「せんだい都心再構築プロジェクト」指定第1号であり、ナノテラスとネットワークで接続、実験準備も可能であることから、ナノテラスを活用するためには非常に有効な拠点になると住友ゴム工業では期待している。
 拠点開設に先立って11月17日、仙台市の郡和子市長、官民地域パートナーシップの下、ナノテラスの整備運用を行う光科学イノベーションセンター(高田昌樹理事長)の小林正明副理事長、NTT都市開発東北支店の大久保洋子支店長が出席し、立地表明式が行われた。

住友ゴム工業の村岡清繁取締役常務執行役員があいさつを行い、「来年から稼働を予定しているナノテラスを研究開発に活用し、その効果を最大化するために、仙台市に拠点を開設する。当社はこれまで、最先端の放射光施設やシミュレーション技術を活用して、ゴムの内部構造を詳しく解析してきた。ナノテラスを活用することで、研究開発をさらに加速していきたいと考えている。また、最先端の研究開発は、産学官の協力が成功のカギを握ると考えており、ナノテラスを中核としたリサーチコンプレックスがその連携を加速させ、社会課題解決や新たな価値創出につながるものと期待している。研究成果を基に製品開発の先行化を図り、安全で環境に優しいサステナブルなタイヤ開発を進め、持続可能な社会の実現に貢献していきたい」と、抱負を述べた。