2024年1月10日

新春トップインタビュー2024
ニッタ

事業推進の原動力は”人”
4月から新制度へ

【2023年を振り返って】
昨年は主要な需要業界である物流や半導体分野において、ユーザーの回復の遅れの影響を少なからず受けた一年であった。2024年3月期第2四半期までの業況としては、売上高は価格改定の効果もあって計画値に近い水準へと押し上げたものの、利益面においては、原材料やエネルギーコストの高騰や高付加価値の半導体関連製品の減少により、厳しい状況で推移した。

自動車分野においては、国内では、半導体不足が解消されてきたことで回復が進んだ。しかしながら、海外に目を向けると特に中国の状況が芳しくなく、北米も厳しい事業環境が継続している。北米においては、一年を通して持ち直しの兆しがうかがえたものの、物価高騰のあおりを受けて個人消費が抑制されており、全体的に市場が本格的な回復に向かうには、まだ相応の時間を要すると見ている。

半導体分野では、足元ではメモリなど電子部品の在庫調整が進み、九州地区では活況を取り戻しつつある。今後も需要の拡大を見込む成長市場であり、来期以降には、回復に向けた動きが活性化していくと期待している。これまで活況を呈してきた物流関係では、海外大手EC事業者のプログラムの遅れが懸案事項だが、国内では補修ビジネスが堅調に推移している。物流業界も成長の勢いは衰えておらず、既に新たな案件も出始めていることから、そうした新規の需要の取り込みに向けて準備している。

事業を取り巻く環境はますます厳しさを増しており、今年もそういった逆風は継続する覚悟で臨む。しかしながら、国内は堅調を維持していることで今期の業績予想値は据え置いており、第4四半期もやるべきことをしっかりやり切って、追い込みに拍車を掛けていく。

【中計の進ちょく状況について】
今年も先行きの不透明感は継続しているものの、2024年度は中長期経営計画「SHIFT2023」フェーズ1の終了年度であり、定量目標に掲げた売上高900億円、営業利益率5%、海外売上高成長率130%(2020年比)、新製品売上比率10%という計画達成に向け、厳しい外部環境に屈することなく着実に推進していく。中長計策定時からの経営環境の変化に対応するため、事業・製品ポートフォリオの見直しを進めており、掲げた成長戦略にのっとって既存事業の強化と新規事業の探索に取り組んでいる。成長に向けた施策の一つとして、グローバル展開を推し進めている。ベルト・ゴム製品においては地産地消の体制を構築していることで、グローバル化の進ちょくが成長ドライバーの軸となっている。一方、ホース・チューブ製品については、日系メーカーに向けた事業展開がメインであったが、この事業においてもグローバル化した製造拠点の強みをフルに生かしながら、ローカルメーカーの攻略に努めたい。また、ニッタ化工品が手掛ける鉄道車両部品においても、さらに海外展開を強化していく。特に、今後の成長市場と位置付けている欧州、インド、アジア諸国での拡販を目標としている。ほかにも、クリーンエンジニアリング事業部におけるエアフィルタ製品などでは、台湾の子会社に加えてインドの合弁会社を設立した。今後、海外成長市場での拡販に向けた礎としていきたい。

【新規事業の展開について】
新事業の創出に向けては「新事業探索チーム」を立ち上げてから3年目となる。現段階ではまだ具体的に明かすことができないが、興味深いテーマも進行しており、そういった幾つかの事業化に向けた取り組みが、来期には本格的に動き出してくるだろう。現状では、ファーマバイオ社と再生医療製品の「細胞シート」の製造用機器および資材類の共同開発に取り組んでいる。チューブ製品における医療用送液技術や、各機械装置の設計技術などを駆使して細胞シートの製造用機器類の開発を進めている。再生医療分野での新規ビジネスを推進していくことで、当社としては社会課題の解決に貢献していきたい。ライフサイエンス分野では、蒸気化過酢酸除染装置を用いたBSC(バイオセーフティキャビネット)の除染サービス事業を立ち上げた。一般のバイオ除染法との比較では簡便かつ作業者への安全性が高いことから、今後の再生医療現場等での採用、普及を目指していく。今後、実証試験をさらに重ね、こういった取り組みの認知度をさらに高めていくため、サテライトオフィスを構えることも検討している。

CNT複合化技術「Namd」については、昨年から奈良工場で製造棟が稼働を開始した。分散カーボンナノチューブを炭素繊維に複合させることで強じんな〝しなり〟と急激な復元力を実現しており、現状はスポーツ分野での採用が進んでいるが、一般産業分野における用途開拓にも力を入れている。

【今後の課題への対応としては】
近年の価値観の変化を背景に労働力の流動化がますます激しくなっており、当社としても人材の確保は重要な課題の一つとしてとらえている。およそ2年をかけ人事制度の改定に取り組んでおり、今年4月から新制度に移行させる予定で進めている。事業の推進の原動力は〝人〟である。目標の達成に不可欠な〝人財〟の確保に向けては、多くのスペシャリストを獲得できるような、柔軟性を有する仕組みを作り上げていきたい。