2024年1月10日

新春トップインタビュー2024
十川ゴム

変革し新たな一歩
100周年をあるべき姿で

【2023年を振り返って】
昨春から新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類へと移行し、移動にかかわる制限も緩和されたことで、ようやく通常の事業活動を推進できるという期待を持って今年度(2024年3月期)はスタートを切った。しかしながら、思いのほか市場の停滞は継続しており、原材料価格の高騰も収束に向かうことはなく、調達先の材料やグレードの統廃合が生産に及ぼした影響もいまだに色濃く残っている。また、環境対応による値上げや円安も進んだことで、そのような厳しい事業環境の中で足踏み状態を余儀なくされた一年であった。海外に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻のみならず、中東における地政学リスクも顕在化しており、グローバル社会においては世界が平和を保たなければ、経済も強く影響を受けることを改めて実感している。

今期は既に第4四半期へと差し掛かっているが、足元の状況としては計画に対して若干の未達で推移している。第1四半期までは前年同期並みの水準を維持できたものの、夏場以降は市場の持ち直しの動きが鈍化し、当社の本拠地である関西地区の市況も芳しくなかった。自動車分野においては、取引先がある首都圏・中部地区がユーザーの自動車生産の回復に伴って堅調であったが、関西地区では家電分野や工業用品の汎用品が苦戦している。医療分野、住宅設備分野についてもまだ回復基調とは言えない状況だが、下期では大きな受注確定案件もあるので、通期での計画達成に向け、全力で取り組む。

【中国子会社の状況について】
紹興十川橡胶の前期(2023年12月期)決算については、中国の景気減速のあおりをまともに受けており、売上高は前期比37%減、利益面でも大幅な赤字となった。

一昨年まで、比較的堅調であった日本向けの金型成形品は円安に伴う為替差損を被っており、中国国内および東南アジア向けの金型成形品についても2ケタ以上の落ち込みとなった。中国国内向けの建設機械用ホースについても、前期から一転して大きく需要が減少したが、売上比率については中国向けが70%、日本向けが30%とこれまでと大きく変わってはいない。需要減少の最大の要因としては、不動産市場の低迷に伴う経済失速の影響が大きく、中国の景気動向については今後も先行きを見通すことが難しい。ただ、設立時から事業規模をそれ程大きく拡張しなかったので、人員を解雇することもなく、現状維持の運営で踏ん張っている。これまで日系メーカーを中心とした供給体制を貫いており、現時点では事業の方向性の舵を切ることは考えていない。今後も市場の実態を注視しながら、この2、3年間が我慢のしどころだと肝に命じて推進していきたい。

【2024年度に向けた方針と心構えは】
ここ数年での取り組みが結実し、新たな案件が出始めている。そういった製品においては、実需に結び付けていくために積極的な設備投資を行っており、今後は製造と営業が一体となって事業ポートフォリオの転換を図っていく。新たな事業に集中して育て上げていくためには、従来までの製品群をすべて継続したままでは投資にも限界がある。長い歴史の中で老朽化が進んだ設備も存在しており、労働集約型の製品については今後、設備更新を実施せず生産を縮小していく可能性もある。将来性と収益性を精査して力を入れるべき製品を見極めながら、新たな拡大を見込む分野により経営資源を振り向けていきたい。製品の見直しにあたっては利益面だけを追求するのではなく、お客様それぞれの事情、当社コア技術による製品の踏襲といった点も勘案しながら進めていきたい。

【現状の課題と対応について】
自動車分野においては、世界的な潮流である脱炭素社会に向けたEV化のシフトが国内でも進展していくと見通している。当社としてもこの流れに追随し、従来までの燃料ホースなどの製品に置き換わる製品の開発を一層加速させる。

少子高齢化を背景とする人手不足も大きな課題として浮上しており、若い人材を十分に確保できないとベテランからの技能伝承を実施できないので、その対応に余念がない。現状では、ベテランの工場スタッフに頼っている部分が大きいが、自動化とIoTの取り組みを引き続き進めており、採用活動についても若い世代の価値観に見合った方法を検討している。また、経験値やスキルを高めてもらうための人材教育も随時実施しているほか、従業員が気持ちよく働けるために労働環境の整備にも努めている。

【今年の抱負を】
2024年の意気込みを漢字一文字で表すなら、”挑”としたい。新たな引き合いが増えて新規設備を導入するなど、今年は従来までのシステムを変革して新たな一歩を踏み出すチャンスの年だととらえている。2025年5月に創立100周年を迎えるが、記念すべき節目をあるべき姿で迎えるためにも事業環境の厳しさに敢然と立ち向かい、全社一丸となって挑戦していく年にしたい。