2024年2月10日

トップインタビュー2024
日本ゼオン

ガバナンス強化を念頭に
新たな価値を提供

【これまでを振り返って】
2024年3月期のこれまでの業況としては、特に上期は原料価格の下落や円安基調が継続したことで外部環境については悪くなかったが、中国、欧州を中心として市況が低迷し、全体的に非常に厳しい状況で推移した。主力のエラストマー素材事業においては、合成ゴム関係は為替の恩恵で前年同期の売上高を上回ったものの、合成ラテックス、化成品においては非常に市況が悪いため前年同期の実績を割り込んだ。一方、高機能材料事業の樹脂光学フィルムにおいても、コロナの特需が2022年までで終わったことで利益面は厳しかった。電池材料に関しては海外関連会社の期ずれの影響で減収となったが、下期以降にかけては回復に向かうと見込んでおり、少し明るい兆しがうかがえる。為替の動向については2022年、2023年と円安が進行しており、足元では若干戻ってきたものの、140円台半ばで円安の状況が継続している。主原料であるナフサ、ブタジエンの市況が緩んでおり、原料価格は下がる方向に動いていることはプラス材料となる。今後の見通しとしては、市況の悪化は上期までで底を打ったと考えており、第3四半期以降は緩やかに回復に向かうと見ているものの、回復の度合いのスピードは当初の想定より遅い。引き続き状況を注視しながら、価格政策や在庫の最適化を推進し、より現状の市場環境に対応していくための営業活動を強化していく必要があると考えている。

【中期経営計画の進ちょくについて】
今期から中期経営計画STAGE30の第2フェーズ(2023年度~26年度)へと入ったが、10カ年中期経営計画においては4年ごとにフェーズを作成し、2年ごとにローリングを行うという手法で推進する。第2フェーズにおいては、2030年度の目標に掲げる既存事業ROIC9%、新規事業売上高でプラス600億円(19年度比)という目標を見据えて、定量目標としては売上高5100億円、営業利益580億円、既存事業ROIC9%、新規事業売上高160億円の達成に向けてまい進する。また、全社戦略としては①カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進②既存事業を〝磨きあげる〟。新規事業を〝探索する〟③〝舞台〟を全員でつくる④経営基盤を〝磨きあげる〟の4つを掲げており、④については、コーポレートガバナンスに着目し、外国人/女性役員比率25%、社外役員比率過半数、女性管理職比率12%、政策保有株式対純資産比率15%という目標を設定して第2フェーズから追加した。引き続きガバナンスの強化を念頭に、当社の将来を担う多様な人材の育成と、高度な財務マネージメントを実現していくことで資本効率を高めていきたい。

【通期の見通しについて】
2023年度通期の業績予想としては売上高は3800億円、営業利益は205億円を見込んでいる。下期においては、エラストマー素材事業は合成ゴムが中国経済低迷の影響を受けることは避けられないと見ており、ラテックスも売上高、営業利益ともに上期と同様の水準で推移すると予想している。化成品については、売上高は若干伸長すると見込んでいるものの、利益面では横ばいで落ち着くと見込んでいる。また、年明けに発生した能登半島地震の影響で樹脂フィルムの生産拠点である氷見二上工場が被害を被ったため、樹脂フィルムの販売においても、少なからず影響が出ると見通している。そのほか、電池材料では緩やかながら需要の回復を見込んでおり、売上高、営業利益とも前年を上回る水準で着地すると予想している。

【今後の取り組みについて】
中国のクラッカーの大増設に伴って化学業界を取り巻く環境も大きく変化しており、だれでも作れるものを作っていては今後は生き残ってはいけないと考えている。社内では〝変な製品〟と呼んでいるが、当社しかできない特長ある製品を今後も市場に送り出し続け、ポートフォリオの組み換えにも乗り出していきたい。独自性の強い製品で新たな価値を提供し、お客様と社会に貢献を続けることが当社の強みであるととらえており、イノベーションを巻き起こす人材育成に努めながら、目標を実現していくための柔軟で強固な組織と企業風土を築き上げていきたい。