2021年9月25日

【ホース・チューブ・継手特集】特集トップインタビュー ユーシー産業 永𠮷昭二社長

引き続き指名採用される製品を
明確な差別化でシェア拡大は可能

フレキシブルホース・パイプの専業メーカーとして、常に市場が求めながらも存在しなかった製品や技術を開発してきたユーシー産業。付加価値を高めるなど、製品としての新規性を追求するだけでなく、現状でも新たな市場や用途によって活躍の余地が見いだされる製品においては、その認知度を高めることによって拡販に努める。小回りの利く事業体制を最大限に生かしながら、企業としてのさらなる成長を果たす永𠮷昭二社長に最近のホース事業の動向など話を聞いた。

【2021年12月期第2四半期(1ー6月)における業績、最近の状況について教えて下さい】
今年度の上半期の実績については、売上高が前年同期比で110%、計画比では103%となった。前年度(20年度)が19年度比で3%減とマイナスで推移したが、今上半期の実績では19年度との比較においても6・5%増となっており、マイナス分を取り戻して順調な伸びを示した。コロナ禍の影響によって、今上半期において換気に関連する製品の販売が伸びたことが最大の要因として挙げられ、前年度の上半期では、コロナ禍の影響によって大幅に制限された各家電の生産量が21年度はほぼ通常に戻ったことで受注量の伸びに反映された。上半期以降の状況としては、7月が一番の繁忙月となるはずが、半導体不足の影響によって各家電向け製品の受注計画が大幅にずれ込んだことで、当社の受注量も大きな影響に見舞われた。それ以外の分野での落ち込みはなかったものの、結果として7月は今期で初めて前年割れとなった。8月は例年において、家電向け受注が伸び悩む時期ではあるが、その他分野の受注が順調に推移したことから、8月は前年同月比108%、予算比でも101%を維持することができた

【鳥取工場の現状と、中国生産品の国産化の進ちょく状況については】
鳥取工場では、今期の増産に伴って1ラインの増設を実施し、来期に向けても1ラインの追加増設を予定している。人員面の課題については、昨年に発足した開発専任チームが二次加工・検査工程において、ロボットを使った自動化・合理化による課題解消を図る取り組みを進めている。既に3つの工程で導入しており、年内に新たに2工程において導入する予定を立てていることから、合わせて4人分程度の作業が置き換わり、人員確保という、かねてからの課題解消の一助としての効果に期待を寄せている。中国生産から国産化に向けた移設状況は、空調機器向けドレンホースについては、いまだ中国からの供給を受けているものの、人件費や物流費の高騰といったコストアップ要因が日本以上に大きく、人民元も昨年後半から上がり続けている状況にあって、再び内製化への検討に入っている。

【原材料費の高騰など製造コストの上昇における対応は】
自動化・合理化によってコストダウンを図るなど、価格アップを避ける社内努力を続けている。しかしながら搬送費・原料費の高騰に対してはカバーし切れない状況にまで陥っており、年内の状況を見ながら、来期に向けて自社ブランド品の値上げを検討していく。

【コミュニケーションの手段が制限されている現状での打開策は】
自社ブランド品においてはSNSを使った拡販活動を実施し、キャンペーンによって末端ユーザーに対する商品の認知度を高めるなど、情報発信を通じて商品知識の浸透も図っている。エンドユーザーとのネットワークづくりをダイレクトに進めていくことによって、今後の製品開発にも生かしていきたい。リモートの有効活用については、既に社内・社外を問わず多くのコミュニケーション手法として実施しており、必要に応じて工場スタッフとユーザーとをつなげるなど、顧客への提案力向上にも役立てている。

【拡販に向けた取り組みや、貴社の強みを生かした展開について】
訪問による営業活動が、限りなく制限されている現状にあって、インフラ整備などを担当する自治体やJV(建築業の共同体)といった方面に対する活動が一番の課題となっている。しかしながら過去の実績が信頼性という強みとして働き、今期は「福島原発向け」と「東北新幹線整備事業」の大型物件を受注したことで、「屋外用エバフリーBFP」の需要量は1・5倍にまで拡大した。拡販に向けた取り組みとしては、空調施工用部材においてSNSを使った拡販活動を開始する。「フクイ建設技術オンラインフェア2021」など、ウェブを通じた展示会にも出展し、「エバフリー」シリーズなどの認知度を上げていく。

【空調機器分野の新規製品の立ち上げ状況について】
来シーズン向けとして既に1品種が立ち上がっており、年内にさらに新品種を上市していく。来期にも1品番の追加があることから、今期を上回る生産能力確保が必要となる。新たなドレンホースNDH型用接続パーツ「VP管同径・異径ジョイント」の各パーツの販売量はほぼ前年並みとなっており、NDHの動きと同様の結果を収めた。改めて国内生産に切り替えた断熱ドレンホースの「NDH」シリーズについては、国産化によるメリットとして、本格需要シーズンに向けての大幅在庫を持たなくても安定供給が可能となった。欠品のリスクも大幅に削減できた上、市場の変化にもスムーズな対応が可能となり、繁忙期においても十分な対応を行うことができた。同じく国産化したYDHにおいては昨年度125%、今期120%と前年を大きく上回る実績で推移しており、来期以降もさらなる拡販に取り組み、引き続いて大幅増を目指す。

【エバフリーシリーズについては】
エバフリーの屋外用・橋りょう用「BFP」においては、大型物件もあって前年比150%近い実績となり、埋設用「CFP」についても前年比125%と大きく伸長した。BFPに関しては、道路等橋りょう部での使用率が多いが、その他ホテル・学校・店舗などの屋外排水材、トンネル工事においても使用実績を重ねており、当初は想定していなかった多くの現場で使用されている。基本的にエバフリーは、塩ビ管を使用する多くの場面において〝曲がる塩ビ管〟としての特長が普及の一端を担って広がりを見せており、今後とも認知度の向上の高まりとともに、使用範囲は一段と広がり続けると見込んでいる。そのため現状の規格を変えることなく、少しでも広い用途での利用を促進する目的から、情報発信に従来以上に尽力する必要があると考えている。その先にニーズに応じた派生製品の開発も視野に入れる。

【新しい取り組みにつながるようなニーズや相談などといった動きは】
今期、換気機能付き空調機器市場において出荷量が大幅に増えており、来期に向けても展開機種の増加といった底上げを踏まえて一段と出荷量を上げていく計画を立てている。生産量増加に対する安定供給に向けては設備強化およびライン整備を行い、市場の大きな動きにも対応できる生産環境を整えていく。換気機能付き住宅についても戸建て住宅市場そのものの厳しさはあるものの、ニーズそのものは高まっており、それに伴い当社の住宅向けダクトの需要に対する要望も高まっている。この分野においても、安定供給に向けた設備強化を実施している。

【エアコンなど空調関連における展開は】
家庭用エアコン市場は、20年度で1000万台を超える出荷量となっている。空調施工向け商材においては、来期2月には4年ぶりとなる空調展示会「HVAC&R JAPAN2022」の開催が予定されており、当社では、その会場において新製品の発表を計画している。来期に販売を開始することで、市場に刺激を与えて製品の実需につなげていきたい。

【ホース・ダクト業界の発展につながる事業展開と、貴社の今後の企業姿勢は】
自社ブランド品の空調施工向けにおいては、明確な差別化を図り続けることによって、さらなる市場占有率の拡大は可能であると考えている。来期以降も、その施策を確実に実行することで販売増につなげていく。エバフリーシリーズ関連においても派生製品の拡充を図ることで、これからも市場の拡大を図ることは可能であると考えており、それに向けた開発を進めていく方針。OEM品においても、各ユーザーが求める特色を備えた差別化を付与し、VA提案を行い続けるための製品開発に力を注ぐことで、獲得した市場の維持だけでなく、顧客の次の製品開発においても、引き続き指名採用されるモノづくりの環境を整えていきたい。